『折り込み』と言う仕事

油脂を折り込むと言うこと。

パン屋さんの厨房の一角には、クロワッサンや、コルネ、パイを折り込む仕事があります。

ムラタが大好きなポジションの一つです。
薄い生地と薄いバターが層を成して、サクサクとした食感が楽しめる
あの美味しいデニッシュなどもこのポジションの仕事です。

バゲットとか、食パンは、油脂を練り込む(混ぜ込む)に対して
クロワッサン、デニッシュ、パイは油脂を(折り込む)です。

この練り込むと、混ぜ込むは、全然違うもので、
練り込むと言うのは、生地中に均一に隅々にまで行き届く。
グルテンの繋がりに付着して、伸びやすくなったり、口溶けが良くなったり、
保存性が良くなったり。

折り込むと言うのは、包む生地に対して、馴染む事なく、生地と油脂の完全に別れた層を作り上げていくと言う事。

練り込むと折り込むの中間

今まで修行させて頂いたお店で、折り込みが綺麗なパン屋さんもあれば、折り込みが練り込みに成っているパン屋さんもあったし、綺麗な折り込みをしているけど、時間が経って生地に馴染んでしまう状況を作っているお店もありました。

お店単位で考えると、あの店は。。。この店は。。。

だけど、一つの『従業員数名のパン屋さん』でこの折り込みをするのは、実は大概一人だけ。

そして、その一人がまた次の人に伝えて、そしてその人がまた違う人に伝えて。

こんな慌ただしい厨房の中で行われる無責任な『伝言ゲーム』のせいで

あの店のクロワッサン、美味しかったのに今は。。。。
なんて言うことになるのです。

だから、一人一人がしっかりとした練り込む事と折り込む事の違いを考えて取り組んでいくべきなのだと思う。

一人前になるまで常にシェフと一緒に折り込みをする。

ムラタはこの『伝言ゲーム』が苦手です。

伝えたいことがあるのに、伝わらない現実と、伝えてもいないことが実行されている事。そして何の理論も根拠もない折り込みをして、それがお店に並ぶことを嫌がります。(ムラタのトリセツ1ページ目参照)

だから、折り込みはメインで折り込むのはスタッフですが、常に横で見えないハリセンを構えて、パンダのような目で厳しい視線を送って一緒に取り組みます。

一人が学び終えたら、また次の一人、その一人が終えたら、また一人、
永遠に終わる事のない、知識と技術の継承。

だからムラタパンは折り込みをする

包む生地(デトランプと言います)の状態はどうだ
包まれるバターの状態はどうだ
生地の冷やす理由はわかっているか
生地を冷やす時に接触している物質の比熱を考えているか
生地の伸展性とバターの可塑性は釣り合っているか
デトランプでバターを包んだ瞬間から温度の移行が始まるが、理解して感じ取っているか
油脂によって可塑性のある温度帯を理解して折りこめているか
折り込んだ後、デトランプとバターが馴染んでいく現象が起こるような生地配合になっていないだろうか

さらっと書き上げただけでも折り込みが練り込みになってしまうポイントは山のようにあるのです。

この一つ一つを理解してもらって、折り込みをする。

そしてその丁寧に折り込まれたパンを焼成する。

時間はかかるのですが、このブログにも少しずつ書いていこうと思います。

折り込みが練り込みに成ってしまったパンを見て
スタッフに詰め寄った。
理由も理解できているようだ。
だけどこんなパンを焼き上げてしまったらしい。
今目の前でしているパン作りが、焼き上がり、陳列されて、人様の口に入る所までを想像するには、まだまだ未来を見る力が足りなさそうです。

また一人、成長中のスタッフ。
このポジションを一人前に熟すまであと一歩だと思うのです。
今回のこの折り込みパンの失敗点は、
『バターの温度が低かったらしい。』

だから均一な層が出来上がらなかったと。

事後報告は出来るようになった。

あとは事前にそうならないように瞬間的に判断するだけです。

頑張れ。。。