先週の続き
失敗したクロワッサンのデトランプのお話をしましたが
左が失敗した生地から出来上がったクロワッサン
右が通常の生地から出来上がったクロワッサン
素人目にもわかる様な違いが出ております。
層の部分に注目して見てみると失敗の方は
層が潰れてしまっている
層が馴染んでしまっている
という感じです。
何が理由で層に違いが出るのか
クロワッサン、デニッシュというパンは
生地とバターの層で成り立っています。
この層が、折り込みの過程中に
割れることがなく、馴染むことがなく、一定量同じ間隔でバターの層を作ることが出来ると写真右の様なふわっと浮いたクロワッサンが出来上がります。
折り込んでいる油脂が環境(冷却の度合い)によっては割れてしまう事。
その折り込む油脂が、バターなのか、コンパウンドなのか、マーガリンなのかによっても必要となる知識は変わってきます。
想像して欲しい事は
食パンなどにバターやマーガリンを塗る時の事。
冷蔵庫から出したばかりのバターは固くて塗れません。
それに引き換えマーガリンは冷蔵庫から出したばかりでも適度に柔らかくて
苦無くパンに塗ることができます。
ここで覚えておいて欲しい事は、同じ5度だとしても油脂によっては伸展性が有るもの無いものがあるという事です。
メゾンムラタがバターを折り込む時の温度は18度前後。
これもバターによって少し違いがあるため、その使用しているバターによって微調整します。
例えば、ニュージーランド産のバターと、国産のバターだと、折り込みにちょうどいい硬さのバターは2度ほど違います。
職人さんでも、コンパウンドの折り込みは綺麗に出来るのに、いざバターの折り込みをすると全く出来ないという方は
この油脂の融点の違いに注目するとすんなりと上手くなる事があります。
デトランプと油脂が、延ばして折りたたむ過程中に作業によって擦れて馴染んでしまうこと
デトランプの配合に油脂が多く入る場合、包むバターと一体化する可能性を考慮すること
デトランプの配合に乳化作用の有る物が含まれている場合の考慮が出来ていること
などです
この馴染むことが無いというのは、技術的な部分も有るのですが、『そもそもの配合』が原因となってバターとデトランプが馴染んでしまっている事もあります。
その場合は、いくら上手に折り込みをしたところで、綺麗に浮かない(膨らまない)事がありますのでレシピの見直しが必要な場合があります。
良くありがちなミスとして、デトランプを仕込む際に、前回の折り込み生地の残りを残生地として入れる時。
この時にしっかりとした決められた残生地配合量を決めていないと、そこに入っている(折り込まれている)油脂がデトランプ中の油脂量を増やしてしまう事をしっかりと認識する必要があります。
デトランプの油脂量というのは、適度に多ければ、生地の伸展性が良くなり、延ばしやすいというメリットがある反面、多く入れすぎたりすると、包むバターと同化(馴染み)しやすくなります。
この失敗をしているパン職人さんが結構いらっしゃる様に思います。
水と油脂は馴染みにくい、油脂と油脂は馴染むという事を念頭において接してあげると、折り込みが思う様に出来る早道だと思うのです。
乳化作用については、卵、イーストに含まれている乳化剤等があります。
この乳化作用のせいで折角綺麗に折り込みをしたクロワッサンでも、時間とともに乳化していってしまって、焼き上げる時にはバリュームにかけたパンが焼きあがる事があります。
これは、材料選びの時から、どのような折り込み生地を作りたいのかをしっかりと頭に入れた状態でレシピ作りをする事が必要になります。
乳化していてしっとり系もそれもよし、乳化がなくパリパリもそれもよし。
めん棒やリバースシートなどで折り込みをする際、出来るだけ最小回数で延ばすことを意識すると層は残りやすいです。
この延ばしやすさというのは、材料に伸展性を出させるものが入っているかがポイントになります。
簡単な範囲で言えば、油脂分の量。少し難しい範囲で言えば、グルテンの軟化作用のある天然酵母等の使用。
折り込みをする際に生地が延ばしやすいかどうかをどの様に作るかという観点と
折り込み中の厚みを出来るだけ揃える事が大事です。
これはデトランプをどの様に仕込むか、どの様に冷却するか、どの様に加工硬化と構造緩和のバランスをとるか、どの様に伸展性をだすレシピ作りをするか等々です。
今日はやけに難しい内容をダラダラと書いてしまいました。
次回は厨房ではこんな感じで進んでいますと言うのを説明しようと思います。