乳製品を多く含む生地の発酵は遅くなると言う事実から推測できる事。クロワッサン編。

クロワッサンの折り込みと練り込みは違う

今日書きたい事はクロワッサンのバターの折り込み練り込みの違いを書きます。

まずクロワッサンが焼き上がる時にふわっと持ち上がって焼き上がるためには、
クロワッサンのデトランプと呼ばれる生地と折り込み用油脂(バター)がきれいな層を作っていることが必要になります。

これは何故かと言うと、クロワッサンがオーブンに入った直後から急激に折り込まれたバターが沸騰して生地を持ち上げることと、イーストの発酵による最終的な生地の膨張の両方で膨らむからです。

言い方を変えればバターと生地の層がしっかりと出来上がっていなければ急激なバターの沸騰が起こらずバターを多く含んだパン生地として焼き上がると言うことになります。
要するに三日月の形をしたバターパンです。

クロワッサンと三日月の形をしたバターパンは全く別物です。
材料は全く同じでも、口の中でのパンの感じ方が別物になります。

写真下の左が折り込まれたクロワッサン。右が練り込まれたクロワッサン

 

 

 

 

折り込まれていると言う事はバターとデトランプが馴染んでいない状態で層を作っていること。

練り込まれていると言う事はバターがデトランプに馴染んでしまっている状態で層がなくなっている状態

この2つの折り込まれているクロワッサン練り込まれているクロワッサン
材料としては全く同じものです。
ですが、パンとしては見た目は似てるけど、中身は別物っと言う感じです。

 

この2種類のクロワッサンを発酵という観点で見比べてみます。

折り込まれているクロワッサンはデトランプがしっかりとした硬さを持っていて、
デトランプの層の間に薄いバターの層が存在しているという状態です。

練り込まれているクロワッサンはデトランプが折り込むはずのバターが練り込まれてしまっていて
デトランプ自体の硬さが緩くなっていて、その緩くなってしまったデトランプの層の間に、(折り込み用油脂)バターが所々点在しているという状態です。

これは結論から言ってしまえばデトランプに入っている基本材料が変わってしまうと言う事

練り込まれていると言う事はデトランプに対して乳製品が多く入ってしまっている状態になります。
生地に乳製品が多く入ると発酵を阻害されてしまって発酵が遅くなることがあります。

この違いはバゲット生地のレシピと菓子パン生地のレシピなどを見比べると分かり易いと思います。

バゲット生地など乳製品や砂糖が入らない生地の場合には生イーストの場合1キロの粉に対して2グラムで十分膨らむのですが、
菓子パン生地など乳製品や砂糖が入る生地の場合には1kgに対して、20グラムほどの生イーストが必要になることがあります。

この上記の例から見ても分かる通り、
クロワッサンの折り込み用油脂(バター)が馴染んでいない状態で折り込まれたクロワッサンと
バターが馴染んでしまっている状態で練り込まれたクロワッサンでは当然発酵するスピードが変わってきます。

下の写真の左が折り込まれているクロワッサン、右が練り込まれているクロワッサン。
同じように発酵させているのに、膨らみが全く違います。
折り込まれている左のクロワッサンはカクカクとした状態で発酵が進むのですが、
練り込まれている右のクロワッサンは丸みを帯びて、鉄板に張り付くように発酵が進んでおります。

 

 

 

 

デトランプにより多くのバターが染み込んでしまっている(練りこんでしまっている)クロワッサン生地は、発酵の過程で、ブヨっと膨らみ発酵してきます。
デトランプが折り込み用油脂を含んでしまったものはやはり、クロワッサン生地全体が緩くなります。だから、角が残るシャープなクロワッサンには成らず、『ブヨ』っとした丸くぼてっとしたクロワッサン、しかもサクサク感も出にくく、内層を見てみると、綺麗な均一な空洞がなく、ひどい時になると、大きな空洞が一箇所に出来上がると言う摩訶不思議な事が起こるのです。

ではどうしたら良いのか。

バターが馴染む馴染まないの話だけに焦点を当てて話すとするなれば、
バターの硬さを丁度よくしましょう。
この丁度よくというのは、デトランプで包んで延ばした時に同じ位の延びやすさで伸びるという事。

たまに、『同じ温度で』という人が居ますが、それは現実的に無理な話だと思います。

クロワッサン生地が1℃でバターも1℃だと、バターは絶対に延びません。
粉々になっておしまいでございます。

ムラタ的に言いますと、デトランプは0〜1℃、バターは15℃〜18℃
この温度の移行が進む前の段階で折り込みを終える。

これに限ると思います。

っという事で。練りこみ折り込み全く別物という事を本日は話させていただきました!!