クロワッサン生地、デニッシュ生地の捏ね上げから冷却まで

クロワッサン生地の仕込み上がりで注意していることはと言えば。

冷やしかたです。

生地のミキシングの強さ、給水による生地の固さは、そのお店ごとに『これだ』っと言うところで
安定させればいいと思うのですが、

生地が捏ねあがった後の対応にしっかりとした意図が反映されていない場合。
今日のデトランプはいつも通り捏ねているのに延びが悪いとか
今日のデトランプはいつも通り扱っているつもりなのに、バターを折り込んでいる最中にハミ出す、割れるとか
バターが端まで行かずに生地だけが先行して延びていくなどの現象が起こります。

なぜクロワッサン生地の状態が冷却の仕方によって変わってしまうのか。

これは、パン生地の扱い方全般的に言えることなのですが、生地の中に発酵の副産物の二酸化炭素とエタノールが含まれている時と含まれていない時では
その生地が、含まれている時=強くなりやすい。含まれていない時=強くなりにくい。と言うのがあります。

もし一次発酵をさせた上で冷却させる場合、生地は強くなります。
もし一時発酵なしで、捏ね上げ後、玉取をして直ぐに冷却すれば生地は強くなりにくいです。

ここがクロワッサン等の折り込み系発酵生地の難しいところで

バターがもっとも綺麗に伸びる固さに、折り込む直前のデトランプの固さを合わせていくと言う事です。

(バターの温度で言うとムラタパンで使っているNZバターの場合には16度位。明治バターで言うと18度位)毎回温度を計っているわけではないですが、この固さが良いっと言うのが感覚的に身につくまで手の感覚にすり込みます。固さが柔らかすぎたり、固すぎたり、一度溶けてしまったりしていると激しくシェフから怒られることになります。

どのようにデトランプの固さを合わせていくのか

デトランプの固さが変わる要因は主に
生地の捏ね加減
使用している粉に合わせた給水量
生地の冷却までに発酵する度合い(意図的に発酵させる場合にはその発酵加減)
粉と水が触れ合ってからの経過時間による水和の加減
延ばしたりした時に起こる加工硬化をどれだけ起こすかとそれが緩む構造緩和が起こる時間との関係

これらがメインで考えていきます。

ちょっと複雑なレシピで言うと
ルヴァンリキッドなどを使うレシピの場合には、そのリキッドがどれ位
酸化していて、本捏ねの生地に力がつくかと、そのリキッドがどの位溶けていて
その本捏ねの生地が溶けるかと言う見方も必要になります。

上記の基本的な知識をふまえた上でどんな生地作りをするかはそのお店ごとに違うと思います。

例えば、給水が多めで緩い生地だから、ミキシングをしっかりとして、一次発酵をさせて力をつけて、冷却をする。そして、水和が進みすぎない時間を置いて、加工硬化があまり解けないうちに折り込みをする。と言うパターンもありですし。

給水が少なく硬めの生地だから、ミキシングを弱く、一時発酵は無しで力をつけずに、ゆっくりと休ませて、水和をしっかりとさせて柔らかくなったデトランプでバターを包むと言う考え方もありです。

大事なことは

バターがもっとも綺麗に伸びる固さに、折り込む直前のデトランプの固さを合わせていくと言う事です。

理想の生地作りを現場意識で作ること、理想意識で作ること

具体的にどんなレシピ作りをするか、どんな流れで折り込みをするかと言うのは
そのパン屋さんの設備や人員、一日の作業の流れに左右されます。
こんな食感でこんな軽さで、こんな日持ちのパンを作りたい。
だけど、生地をこねあげる時間は朝一で、折り込みに入れる時間が昼過ぎで。。。
なんて束縛が多く存在するのです。

その中で、何を妥協して、何を優先するかの決断が難しいですが基本的な知識で
色々と対応することができます。

ムラタパンでは、生地のコネ加減はしっかりと。
即時に冷却をかけます。
この時に余計な発酵をして力がつかないように小分けの玉取にして
冷やした天板に軽く押さえつけて密着させるようにして素早い冷却を考えます。

1時間〜2時間ほど置いたのち

かり延ばしをして天板に再度置いて構造緩和と水和を促します。
この時に、生地が強いと感じれば、左のように少し大きめに延ばして
折り込み時に発生する加工硬化が少なくなるように考慮します。
生地が弱いと感じれば態と右のように小さくして、
折り込み時に発生する加工硬化が強くなるように考慮します。

っとこんな感じです。

かり延ばしの時に、ここは感覚的な話になりますが、強さを感じてどうするかの判断をしなければなりません。

同じようにミキシングをしても、時にはリキッドのせいで緩いこともあります。
同じようにミキシングをしても、時には捏ね上げが高くて冷却が間に合わず
力が付いていることがあります。

全ての工程の中でバランスを取って行く事。
こっちで弱くなるのなら、こっちで強くする。
こっちで強くなったのであれば、こっちで弱くする。

知識でカバーできるところはカバーします。

ここまでが、捏ね上げから冷却までの間に考える基本知識。

感覚にすりこむ事。考える事が出来るようになったら
あなたの手が感じる事を的確な情報としてそれに反射的に反応する事。
回数を重ねて行く事でしか身につかない地道な作業ですが、
これが出来る職人と、出来ない職人では、少しばかり未来が違う気がするのです。

来週は、折り込みの仕方。4つ折り2回を書こうと思います。