『前回の生クリームリッチミルクパン』のレッスンでは中種を使う事をお伝えしましたが。
この中種を作ると言う事自体が少し面倒だったりしますよね。
そこで、『中種を作る事』で一手間増やさない為にできる方法があります。
それが今回お伝えしたい、『連続中種法』です。
結論から初めに言ってしまいます。
次の仕込みに混ぜるのです。
このタイミングよくというのが肝なのですが、タイミングが悪いと効果があまり無くなるので、しっかりと理解しましょ〜。
実際の効果は、生クリームリッチミルクパンの時のレッスン内容と同じ位の効果があります。
=中種法と同じ位の効果。
ここで、『同じ位』と言いますのは、
今回も、長々と説明をさせて頂きますが、お付き合いよろしくお願いいたします。
では、とりあえず、こちらの動画を見てください。
とりあえず、一連の流れを一まとめにしてみました。
ムラタ パンの持っている卓上ミキサーは壊れていて、高速しか入りません。
そこは突っ込まないでください。
カメラを買い換えて、使い方がまだいまいちわかっていません。
そこも突っ込まないでください。
途中で意味深な行動をする事があります。
そこも突っ込まないでください。
っで焼き上がりの結果は。
冷めたらカチカチ!
なんなのよこのパンは!!
そうなんです。
このパンが凄い硬いパンに成ってしまったのには2つほど理由がございます。
まずは、レシピが根本的に出来上がっていないという事。
ムラタ がネットパン教室で使っているレシピは、完成品を流用しているわけではなく
新しいレシピで取り敢えず作ってみて、レシピの微調整をして作っております。
初発は大概失敗します。
なぜかと言いますと、毎回使用する粉を変えているから、給水量がわからないのです。
いつも同じ粉を使っていると大体検討はつくのですが。。。言い訳がましくて申し訳ないです。
皆さんも、使用する粉を変更する場合には、レシピ調整が必要になりますので、
お気をつけくださいませ。
そして2つ目がそもそも種が無いという事。
そうなんです。この連続中種法をする時というのは、1回目は種が存在しないのです。
なので、1回目だけ普通の中種法をするとか、1回目は我慢して、種無しでするとか、
全く違う種類のパン生地(前回作った生地を保管しておいて)で代用するとか。
などの工夫が必要になります。
=種の代用→ふと出てきたこのワード。これが出来るとセミプロレベルの知識があります!!
今回は説明をシンプルにする為、1回目は種無しで仕込む説明で進めさせて頂きます。
では、ミルクハースの説明スタートです。
材料
イーグル 220g
砂糖 16g
塩 4g
イースト(ゴールド) 2g
牛乳(常温) 185g
無塩バター 10g
連続中種法の種 40g
今回は、水を使わないレシピです。
牛乳が水の役割をはたしますので、冷蔵庫から出したばかりの冷たい牛乳は使わないでおきましょう。
連続中種法の種は初回はありませんので、無しで大丈夫ですが、
生地を作っていく最中で取りまして、冷蔵保管の上2回目以降に使用します。
今回の一番理解して頂きたい部分ですので、、読み進んでいくうちにわかります。
今は、なんとなく種を生地からとるんだな〜位で認識しておいてください。
最終的に出来上がった生地の一部分
200gに対して、50gのクルミを入れます。
クルミはローストしていただいても良いのですが、
ムラタ パンはローストしません。
これは、フランス修行時代から変わらぬ行為でして、
実は日本で良く行われる、クルミのロースト。
一度もした事がないのです。
ローストすると香ばしくなっておいしくなるとは思うのですが、
さらにパンに入れて焼き込むので、行き過ぎてしまうように思っております。
ローストしたい方はそれでも良いと思いますので、この辺りはご自由に。
では、捏ね始めます!
捏ねる
最初の動画よりか、牛乳の量を増やして捏ねた動画です。
この動画でしっかりとみて頂きたい部分は、
種の入れるタイミング。生地の固さ。
の2点です。
材料の違いを言いますと、水が牛乳に変わった位で大きな変化はないのですが、
220gの粉に185gの牛乳が入っている事を考えると、吸水率84%。
これって、結構水分が入っている方なんです。
だけど、生地はベタベタではないのです。
捏ね始めて、しっかりと力が付いたところでバターを入れます。
バターが馴染んだところで、中種を練り込んでいきます。
(初回の方は、この中種は存在しません)
生地全体が捏ね上がったら、200gの生地を取り出して、クルミ50gを練り混ぜていきます。
クルミなどのナッツ系の混ぜ物の注意点ですが、
基本的には、せっかく出来上がった生地を壊してしまうと覚えておきましょ〜。
今回の様な、リッチ系の生地の場合には左程、特別な対処は要りませんが、
これが、ハード系の混ぜ物になると、対処が必要になって来ます。
例えば、パンチを入れるタイミングを少し遅らせる事や、
冷蔵発酵中に生地に力が付きやすくするために、ガスの保有を多めにした状態で
冷蔵発酵をとるなどの対処が必要になります。
混ぜ物をするときには、
その混ぜる食材が、
堅いものなのか、柔らかいものなのか。
→混ぜるときに擦り潰さないように気を付ける事や、生地を痛めない事を考える。
糖分を含んでいるものなのか、含んでいないものなのか。→イーストの添加の必要性を考える。パンチのタイミングを変える。
水分を吐き出すものなのか、吸い込むものなのか。→生地の硬さの調整をする。
一口に混ぜ物をすると言っても、なかなか難しいものです。
混ぜ物の具体的な対処の仕方は、今後その都度お話しさせて頂きます。
一次発酵前半→パンチ→一次発酵後半
生地が捏ね上がったら、乾かないようにラップなどをして、
いつも通り、一次発酵をとります。
今回は、30度で50分とりましょう。
温度と、発酵時間の関係は、以前にもお話しさせて頂きましたので、割愛させて頂きます。
それよりか今回お話ししたい内容は、
乳製品の発酵阻害についてです。
パン作りでは一般的に、乳製品を生地中に使用すると、発酵が遅くなると言われております。
これは、乳製品中に発酵阻害物質が入っているからと言われてます。
だから、どのような対処を取らなければいけないかと言いますと、
一次発酵の時間をいつもより長くとる事で、対処ができます。
これが、基本的な対処法の一つなのですが、
他にも色々と方法があります。
『乳製品を入れる=発酵が遅くなる』っという事は発酵を早めてやればいいのです。
どうやって?
簡単だけど、ボリュームだけのパサパサパンになりやすいです。
イースト等の活動しやすい環境を整えてあげて、発酵を早めてあげるのです。
具体的には、生地の酸化のバランスを整えてあげるのです。
この生地の酸化の調整役になるのが、今回は、連続中種法の中種になります。
同じ役目を果たすものは、パン作りには色々とありまして、
ヨーグルトや、天然酵母、ビタミンC、ポーリッシュ種、中種(老麺)
使う理由には共通点があるのです。
パンチ→冷蔵庫へ。
一次発酵の後半が取り終えたら、もう一度パンチを加えます。
このタイミングで『種』をとっておきましょう。
とる種のグラム数は今回40gにしました。
(40gにした理由は、粉量220gに対して、20%=44gを超えない量と言うのが理由です。
44gでやりたい方はそれでももちろん大丈夫です。
逆に10%=22gでも効果はあります。
説明の簡略化の為、今回は40gで進めます!
この種ですが、どの位冷蔵庫(0度〜3度)で保管できるかと言いますと、
2、3日は全然問題なく保管する事ができます。
もっと職人的な事を言ってしまえば1週間位は大丈夫です。
(この保存可能期間というのは、生地が腐らない範囲で保管できますよ!っというものです)
腐ると、酸っぱく成ったり、ドロドロに溶けたりします。
この40gの冷蔵庫で保管していた種を使って、次のパン作りの時も捏ねてください。
そうすると、何も不思議なことはないのですが、40g生地総量が増えるのです。
そして、また40g種としてこのタイミングで取り出して、冷蔵保管しておいてください。
っとこんな感じで、永遠に
種を取り出して別保管(−40g)
その種を使って生地を捏ねて、(+40g)
種を取り出して別保管(−40g)
その種を使って生地を捏ねて(+40g)
種を取り出して別保管(ー40g)
その種を使って生地を捏ねて、(+40g)
ずーっとこんな感じで使い続ける事ができるのです。
この繰り返しが、実は、パンにとって『遺伝子の継承』みたいな行為になるのです。
その生地中に存在する菌というのは、一回事に使い切るパン作りに比べると、別物になるのです。
その別物が、あなただけのパンの味になってくれると、ムラタパンは思っているのです。
冷蔵庫に入れる前の動画がこちら。
勢いで全部の生地を使い切ってしまわないように、種だけ別にラップして、
保管しておきましょう。
では、この冷蔵庫に入れた生地(種では無い方の大きな生地)ですが、
どの位の間冷蔵庫で保管ができるかと言いますと、
前回の生クリームリッチミルクパンの低温長時間発酵の時の説明と同じになりますので、
そちらを参考にしてくださいませ。
冷蔵庫から出して、軽く丸めて、ベンチタイムへ。
今回作るパンは、ちょっとサイズの大きい『ハース型』を作りますので、
ベンチタイムが少しだけ長い時間かかります。
30度で、40分〜50分はかかります。
大きいパンは生地温度の上昇に時間がかかるので、ベンチタイムの時間が長くなります。
として、ラップをしていまして、白い生地は乾いておらず、クルミ生地だけが乾いておりました。
ベンチタイム終了後→成形
成形します。
ハース特有の切り込み(クープ)を入れます。
最終発酵までお進みくださいませ。
成形終了→最終発酵→焼成
最終発酵の時間は35度で45分〜(30度で50分〜)見てみましょう。
最終発酵を取り終えてみると、
クープの入っている所と、入っていないところがクッキリと別れて
いかにも『ハース』みたいな形になっております。
塗り卵をして、焼きます!
超倍速ですが、こんな感じです。
190度で18分〜21分は焼きます。
途中でタイマーが止まって、家庭用オーブンの場合設定がややこしくなるのを防ぐため
最初から21分でかけておりますが、
早く焼き色がつき過ぎそうだったら、設定温度を途中でも下げたり
色が21分でつかなさそうだったら、設定温度を途中でもあげたりします。
このオーブンに入れた動画で見て頂きたいのが、
パンが膨らんでいる様子です!
膨らんでる〜。
すごいね〜。
かわいいね〜。
とかではなくて、
21分でセットして、15分30秒位まで膨らみ続けているのが見えますでしょうか?
これを『窯のび』と言うのですが、
この『窯のび』をどのようにしたいのかを、考える事でパンの出来上がりはすごく変わります!
まずは、窯のびが起こる大きな要因はこんな感じです。
生地が硬いと延びが悪く膨らみにくくなります。
逆に柔らか過ぎても延びにくくなります。
生地が弱いと膨らみにくくなります。
それに生地が強過ぎても膨らみにくくなります。
パンを焼く時に表面に、
卵を塗ったり、
オリーブオイルを塗ったり、
霧吹きで濡らしたりします。
生地表面が乾いて伸び無い状況になればそれ以上膨らむことが困難になります。
オーブンに入れた直後に勢いよくガスが発生すれば、膨らみやすくなります。
ガスの発生が弱ければ、膨らみにくくなります。
生地中に均一に適度に大きなガスの核が有ると均一に膨らみます。
偏ったガス玉が有ると不均一に膨らむか、膨らんでいる途中で潰れたり
伸びないことがあります。
生地表面が熱々のオーブンに入った直後に延びる間も無く焼き固まってしまって、
膨らみにくくなると言うわけです。
イメージしにくいですよね。
そうだと思います。
だってパン作りの一番大事な『核心』に近づいているのですから。
わかり難くて当然です。
そこで、ムラタ パンでは、新しいスタッフが入ってきた時には、こんな表現で教えます。
風船を膨らませる人間をイメージしてもらいます。
膨らまないですよね。。。
もし風船がシャボン玉みたいな風船だったら、膨らんで維持できますか?
破れて潰れますよね。
ゴム風船の様に進展性のある素材だったら膨らんで維持できますよね。
これが硬さと力を考えると言う事です。
でも3人で4人で同時に膨らますことができれば簡単ですよね。
これが発酵力があるかどうかと言う話です。
浮き輪の中に3袋のガス袋が別れて入っていたら一袋破れても溺れないですよね。
これが、ガスの核の安定性と言う話です。
ハード系のパン作りには、この『ガスの核の安定性と質』と言う考え方が大事になって来ます。
こんな感じで、膨らみやすいパン作りをすると言うことは、
どんな風船を用意するのか=生地の硬さ、伸び易さ、
どんな膨らみ加減にするのか=ガスを吐く量と質
どれくらいの風船をパン生地中に作るのか=潰れない安定性
こんな事を考えてパン生地作りをしているのが、職人さんなのです。
(こんな事を考えなくても、添加物の使用で、一発でパン作りは出来るのですが、古風なムラタ パンは、日々悩みながら上記の内容を考えながらパン作りしております。)

それでも、無添加で出来上がったパンが、焼き立ては当然美味しく、
製法を選んでいただけますと幸いです。
種が種を産む連続中種法では、味や、固さが若干変わってくるのです。
この説明が今回のメインになります。
貴方だけのパン。このお店だけの味。
これって、おばあちゃんの糠漬け。
これと似たところがありまして、
糠を継つづける事と似ているのです。
そこには、愛という名のスパイスが、手間という名の秘伝が込められるのです。