ベンチタイムの生地を乗せる器具について。

今日のお勉強。

ベンチタイムについて
ベンチタイムとは 生地を成形する前の段階で、
一度締めた 生地を休ませて、発酵させて成形し易くする 時間です。
この時のガス(気泡)の大きさも釜伸びに大きく影響を及ぼします。このベンチタイムの時に使用する器具(何の上に生地を置いておくか)にも重要性があるのではないかと思っております。ムラタパンで使い分けている物としては。
『 木の板』
『 ばんじゅう』
『 布板』
『アルミバット』
これらで使い分けを行なっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例えば
菓子パン生地 のベンチタイムを取る時は アルミバットを使います。
バゲット生地のベンチタイムを取る時は 布板を 使います。
食パン生地 の ベンチタイムを取る時はばんじゅうにキャンパス生地を敷いたもので取ります
バゲット生地の混ぜ物(カカオ生地、オリーブ生地等)は木の板を使います。

このように作る パンによって、
扱う生地によって、
ベンチタイムを取るときに
最も良い状況を 作ることの出来る器具を使うべきだと思っています

なぜこのように 作るパン生地によって、
器具を変えなければいけないかと言うと、

 それは発酵していく過程(ベンチタイム中)で生地表面が乾いて欲しいのか
(密閉されておらず外気と触れ合わせる場合)
それとも湿っていて欲しいのか
(密閉された空間で生地の呼吸と自己発熱を利用して蒸れさせる)
これが大きな判断の基準になります 。
生地はパンによっては乾いていて欲しく、パンによっては湿っていてほしい。
同じ生地でも力が弱い時は乾かし気味にして、力が強い時は蒸れ気味にする。
こんな時と場合による状況的判断でも使う器具を変える場合があります。
こんなことを考えるようになったのはフランスでの経験が大きいです日本で当たり前だった事が、当たり前ではないパン作り。
それがばんじゅうの有無。
日本的な、あんぱんやクリームパン等のベンチタイムを取る時は
ばんじゅう等に並べて入れて発酵させるパン屋さんが多い様に思います。
積み重ねることもできるし、
生地の蒸れ加減を、『ばんじゅうをきる、きらない』で調整することもできます。
=『積み重ねる時にずらして空気が通る様にする事をばんじゅうをきるなどといいます。』
フランスではこのバンジュウなるものが無い。
捏ね上がった生地を取り上げるバックは存在しますが、
和菓子に使う様なバンジュウはないのです。
その代わり、木の板や、ルポズパトンと呼ばれる生地を休ませるための
布製のゆりかごが沢山ついている機械などがあります。

こちらがルポズパトンと呼ばれるお写真

 

 

 

左から1番目
板製の中板が入っているパリジャン(器具の名前)
この板製の中板に粉を振って生地を乗せて休ませます。
左から2番目
テンレス製の抜き差し可能な網が差さっているパリジャン(器具の名前)
日本で言うところの『乾ホイロ』のようなものです。
左から3番目
ルポズ パトン
機械式で、ボタンを押すと中に入っている布製の揺り籠が手前までぐるぐると回ってきます。
バゲット生地なら、250本近くの収納能力があります。詰めればもっと沢山入りますが、
揺り籠の中で生地がくっつき合うとあまり好きでは無かったので少しずつ離して置く感じです。
この機械が有るのと無いのとでは、腰にかかる負担が大きく違います。パリジャンに生地を並べて出し入れするタイプはやはり腰に結構きます。
大概がこのルポズパトンの上に、バゲットモルダーが乗っているケースが多いです。
ルポスパトン+バゲットモルダー+分割機(フランスのパン屋さんの三代神機)でしょうか。。。。

左から4番目
布製のスリップマットが入っているパリジャン(器具の名前)
一番左のパリジャンが板製ですが、こちらは布製のスリップマット。
生地を継続して置くと、どうしても吸湿、給水してしまって、板の場合多くの粉を振っても
張り付いてしまったりするので、こちらのスリップマット形式だと、反転させて、裏表使えるのが良いところ。

乾かすことと、湿らすことをしっかりと考えられた器具だと思います。

 

日本に帰ってきて、バンジュウで高加水の生地のベンチタイムを取ってみると。
いくら粉を振っても張り付くし、成形もしづらくなるし、生地を剥がすときに傷んでしまうし。あまり良くないことに気づいたのです。

固い生地や、生地の傷みが品質にあまり影響を及ぼさない生地(油脂分や砂糖等が入っている生地)はバンジュウでも十分綺麗なパンを焼けるのですが、柔らかい生地で、リーンなパンはプラスチックバンジュウでは少し難しいように思います。
こんな経験があり。ベンチタイム中の生地を『何の上で』取るか
その時に、乾かしたいのか、湿らせたいのかをしっかりと考えた上で
器具を選ぶようになりました。ムラタパン的な結論だけ言いますと、
何でもかんでも、バンジュウでベンチタイムを取るべきではない。
その生地が、ベンチタイム終了後にどんな状況になっている事が理想なのかをしっかりと決めて
器具を選ぶべきだと思うのです。
バゲット生地のベンチタイムを布板等の生地が張り付かない、呼吸できるような器具を使うだけでも、驚くくらいの品質改善に繋がったりもするのです。