カヌレの牛乳は沸騰させる事が必要なのか。

今日のカヌレ雑談は…。
もうカヌレの話題は飽きましたと言われそうですが。
ムラタのカヌレ修行はまだまだ続くのです。カヌレの作り方のレシピを見てみると、牛乳を沸騰させて、60度位まで温度を落として、卵、粉、砂糖、最後にラム酒を混ぜると言うのがよく書かれております。ここで何でも疑問を抱くムラタは考えたのです。

牛乳は沸騰させる必要があるのか。

そもそも、牛乳を沸騰させるためのムラタの頭の中にすでに入っている、諸先輩方様からのご指導等に基づいている情報としましては。
牛乳を殺菌するため。
ムッシュー ル ビアンに教えてもらった事。
これは昔々、まだパストリーゼ「殺菌」する技術が確立されていない時に牛乳が「凄くフレッシュ」な状態の物を使っていた時代の話だと思います。
牛乳を75度15秒とか、63度30分とかの熱処理で病原菌を死滅させる熱処理
少なくとも一晩寝かせなければいけないカヌレにとって確かに殺菌は必要項目だと思います。
牛乳を温めてその熱で砂糖を溶かすため。
末廣シェフから教えていただいた事
材料中の砂糖が溶解していないと、均一な焼き色、均一なアパレイユ濃度にならない為。
これも確かに、砂糖(グラニュー糖)が溶けていない状態でアパレイユを作ること自体難しいと思います。
牛乳中のホエータンパク質の熱変性(80度前後以上)を起こしたものや、熱変性を起こした水溶性カルシウムは、特定の酵素等による凝固作用を受けない為、焼成中に不必要な膨張をする可能性がある。
熱変性を起こしている=凝固作用を受け難い=固まり難い=膨らみやすい
熱変性を起こしていない=凝固作用が直ぐに働く=固まり易い=膨らみが早い段階で止まる

と言うグーグル先生の教え(ムラタの個人的な意見込み)。
これが本当だと、沸騰させていないアパレイユは型からはみ出して持ち上がりやすくなると言うことかもしれません。
ここまでくると化学ですよね。
もしこれを検証しようとすると、研究室が必要なレベルな気がします。
これが原因であるとするならば、
超高温殺菌 (ultra-heat treated, UHT) 牛乳を使ってカヌレを焼いている人は『牛乳は沸騰させなくても問題ない』と言う発言をするはずです。
それに引き換え、
パスチャライズド牛乳 63℃30分殺菌
パスチャライズド牛乳 75℃15秒
生乳 未加熱
を使っている人は『牛乳は沸騰させなければ出来ない』と言う発言をしているはずです。

沸騰が必要か不必要かの実験してみました。

実験内容
牛乳の全体量のうち3分の1を沸騰させて、その熱で砂糖を溶かして、混ぜて、最後に残りの3分の2を混ぜる方法をしてみました。

なぜこの方法をしようかと思ったかと言いますと、
作りたてのカヌレのアパレイユはあったかくて、直ぐに冷蔵庫に入れる事ができない。だから最後に冷たい牛乳を混ぜれば一気に冷えるし、砂糖もちゃんと溶けてるし問題ないのではと考えた為です。

まずは、全体量の3分の1を沸騰させる。
そして、粉と砂糖を混ぜ合わせたものに入れ混ぜる。

当然温度は常温の粉&砂糖に混ぜる為下がります。
そこに冷蔵の冷たい牛乳をだばーっと入れます。

一気に温度が下がりました。
これがもし可能な製法なら、冷却の手間も省けて冷蔵庫にそのまま入れれるし、沸騰させる時間も量が少ないから短縮できるし、良いことづくめなのでは無いかと。ニヤニヤしながら翌日を迎えて焼いた結果。

手前左一つだけが、通常の膨らみをする、ちゃんと作ったアパレイユ。
適度に膨らんでこの後、型の中にすっぽりと収まりました。
それ以外は、異常に膨れ上がりすぎて型に沈み込む事ができなくなった実験用アパレイユ。
型の中に戻ること無く、底がつかない為カヌレの底の部分が全く色がつかないと言う現象が起こりました。

っと言う事で、牛乳を全体量のうち部分的に沸騰させて、沸騰させていない牛乳を混ぜこむことは、いい結果を生みにくいと言う事がわかりました。

まだまだ実験と検証が必要ですが、殺菌、砂糖の溶解、タンパク質の熱変性、水溶性カルシウムの熱変性、これらが一度牛乳を沸騰させる事に求めている事なのだと思うのです。

 

結論
牛乳は沸騰させた方がいい。
なぜかと言うと、焼成中の不必要な膨張をさせない為だと思います。

ここでさらに疑問点が。
沸騰までさせなくても、上記の内容をクリアする85度位でも充分ではないかと言うこと。
60度まで温度を下げてから混ぜると言うのは、粉の澱粉質の固化や卵に火が入ることを防ぐ為だと思っているのですが、酵素的な働きを抑制させる為と言う意味合いもあるのではと言う疑問が浮上しました。

また、実験してみます。

とことんカヌレにのめり込んでおります。

最後までお読みいただきありがとうございました。