手間暇かけて作ったパン生地を焼き上げる。
パン作りにおいて、一番最終段階に位置するのが焼き上げ。
MAISON MURATAでは、基本的にオーブンのポジションをまず学んでいただく。
パン屋さんによっては、
オーブンが一番最後に学ぶポジションであったり
仕込みが一番最後であったり
成形が一番最後であったり
日本では、オーブンを学んでもバゲットのクープ入れは初めからさせてもらえなかったり。
修業先々でそれぞれ学ぶ順番は違うのです。
では、なぜムラタパンは初めからオーブンのポジションに入れるのか?
一つのパンの重みを理解して欲しいから。
パンを焼き上げると言うと、『何度で、何分』
これが、パン教室では当たり前のように説明していた事。
では実際のパン屋さんでは、
この鉄板(クリームパン)と、
この鉄板(あんぱん)と、
この鉄板(型に入ったパン)と、
この鉄板を(天板で挟み焼きにするパン)を一緒に窯入れして
となるのです。
そうするとどうなるか。
このパン(クリームパン)は、12分で焼くから。。。
このパン(あんぱん)は、10分で焼くから。。。
このパン(型に入ったパン)は初めに蒸気を入れて焼かないといけないので
クリームパンとあんぱんを入れる前に初めに蒸気を入れてから、
しばらくして落ち着いたところに、クリームパンの鉄板とあんぱんの鉄板を
追いかけて。。。あんぱんクリームパンが先に焼きあがったら下火をあげて。。。
このパン(天板で挟み焼きするパン)も一緒に追いかけれるかな。
焼き上がる時間がこのパンが一番短いから、
手前には(業務用オーブンは奥行きがあり、奥手前で焼くこともあります。)
このパン(あんぱん)を置いて。。。。。。
文章にするとこんな途方も無いことを考えながら焼きをする事になるのです。
こんなパズルのような事を、発酵しているパン生地に追いかけられながら
瞬時にしていくのです。
このパンも、あのパンも、こっちのパンも大事、そして
今焼くんです!今焼かないと発酵が行き過ぎるんです!
今焼くんです!今焼かないと生地の乾き加減が乾きすぎるんです!
今焼くんです!今オーブンに入れないと、次の次に焼くパンが
焼けない状況に陥るのです!
それぞれ一つ一つのパンが全て大事なのです。
この緊張感が成長に必要だと思うスパルタ教育だから。
これだけ息が詰まる中でやはり失敗も多々あります。
そんな失敗の一コマがこちら。
そうです。
焦がしてしまったのです。
いつも通り焼いたはずなんですが、焦げました。
まずは、一つのパンを焦がした事を反省理解する事。
その次に技術的な面で、どうして焦げたのかを理解する事。
底面積が違うと同じ熱量でも火入りが早くなる事。
中に絞るクリームが少ないと蒸発までにかかる時間がいつも通りではなくなる事。
鉄板一枚に乗せる個数が変われば、蒸発にかかる時間が変わっていく事。
全ての理由を後付け的に言えばこんな感じだけど。
パンを焼くと言う事は、
このパンが、
どんな風に仕上がって、陳列されて、
お客様のもとへ届くのかを想像する事。
それを考えながら、一番大事な事は。
このパンは、『こう焼きたい』が一つ一つのパンに持てる事。
このネット教室では、パンの焼き上げについても話していきたいと
思っています。
少しマニアックな話、
家庭製パンでは必要ないかもしれない話、
矛盾がまかり通る『現場』での生々しい失敗談も含めて
お話できればと思っております。
今からパン職人になる方がいらっしゃいましたら、
お役立ていただけますと幸いです。