パイを焼くときの下火

パイを2グループに分けるとしたら

ショーソン オ ポム
ガレット デ ロア
ピティビエ
アップルパイ
パテ

これらのパイを使ったお菓子やお料理達に共通する事。
中に具材が入っていると言う事。

パルミエ
うなぎパイ
パイコルネ
リーフパイこれらのパイ菓子に共通する事。
パイ単体で焼き上げる事。

パイを焼き上げる時に最も意識する事がどちらのカテゴリーに所属しているかと言う事。

パルミエなどは焼く時にパイ自身(小麦粉のでんぷん質、タンパク質)が焼き固まるのを邪魔するものがないので
比較的簡単に焼くことができます。

問題なのは前者。
中に何かを包み込んで焼き上げるパイの場合。
パイ自体の火通りが凄く難儀になってくるのです。
何故か。

パイの火通り

パイがどのように焼きあがっていくかを書き出すと。

  1. パイがオーブンに入る
  2. 一気にパイに折り込まれているバターが沸騰する温度まで上がる
  3. デトランプ(バターを包んでいる生地)とバターの層が、バターの急激な蒸発で浮く
  4. 浮いている状態で焼き固まり始める
  5. バターの蒸発が終了して、浮いている状態のまま焼き固まる

こんな感じです。

パイだけの(何も包んだり固形物を乗せていない)状態の場合
上記の1〜5番が何ら問題なく進行するのですが、

アップルパイなどの中に具材が入るものはこうなります。

  1. パイがオーブンに入る
  2. パイに折り込まれているバターが沸騰するまでに、りんご等の水分のせいで一拍遅くなる。
  3. 折り込まれたバターの層が浮きにくくなる
  4. 乗せている具材の重みのせいで、具材の下側にあるパイが持ち上がらない。
  5. 浮いていない状態だと、火通りが悪く表面だけに火が入る
  6. 焼きあがったと思ってオーブンから出して冷ましてカットしてみると一部、焼けていない生地の状態になっている事がある。
  7. 生焼け感が否めない。
  8. 悲しい。。。。。

こんな感じになります。

大きな違いとして、バターの蒸発(沸点に到達するまで)を邪魔する物質があると言う事。
パイの層の浮きを押さえつける物がある事。

これが生焼けの原因。

もし無重力で焼く事ができれば。。。なんて事を考えたりもしますが
出来なくは無いと思うのですが、やはり地球上では難しい様です。

一旦、目が詰まった状態でパイが焼き固まり始めると、
なかなか、火が入ると言うのは難しいです。

そこで、ムラタパンが試作した事。

出来るだけ水分の少ない状態にした物をパイに入れる事

中に入れるアーモンドクリームだけで焼き上げてそれをガレットに入れてみました。

この一手間が、アーモンドクリームの下側のパイまで火通りを良くさせてくれたのです。

パイを焼くと言う事。
どの様な焼きにするかは職人それぞれ好みがあります。

自分がフランスで働いていた時は、焼き込みすぎるのはバターの風味が損なわれるから良く無いと言う意見もあったり

焦げるギリギリの状態で香ばしさが感じられるくらいが良いと言われることもあったり。

色々な意見があるから、それぞれが美味しい。

だから、パン屋選びが、宝石選びの様に、自分にしっくりとくる宝探しの様に思うのです。

大事なことは、焼き上げた作品が、どの様な意図を持って焼き上げられて、どの様に人様のお口を通って、どの様な感覚を持って頂くか。

気持ちと技術を、1つのパイに込めること。

簡単な事では無いですが、成し得た時、大きな感動があるような気がするのです。