食パンの『焼き』

色々なレストランや、カフェなどでパンを使っていただいておりまして
新しいご希望を伺いました!

『メゾンムラタは山食の食パン焼けないんですか』っと。

通常、角食しか作っていないムラタパン。
山食のご依頼です。

単純に出来る事は出来るのですが、色々な諸条件が有り、
少し試作の時間をいただけることに。

課題1

食パンを焼くときのオーブンの占有時間。
これが一番大きな問題です。
メゾンムラタには食パンが2種類メインでご用意しております。

ホワイト=12㎝角のキューブ状の食パン
食パンの四隅の角が12㎝しか離れていないため焼き時間が34分ほど(比較的短い時間)ですみます。

ブラウン=ホワイトの長さが2倍になってしっかりと焼きこんでいるもの。
食パンの四隅の角が24cm離れている為、短時間では焼ききれず、
焼き時間が54分ほど(結構長いです)かかります。

ちょっと珍しい焼き方をしているのがムラタの食パンたち。

お店には6取天板が4枚入るオーブンが3段のみ。

ここに朝一、ホワイトを60斤、ブラウンを12本詰め込みます。

そうすると、食パンを焼いている間、他のものが何も焼くことが出来ないのです

課題2

蓋をして焼く角食
蓋なしで焼く山食

同じ食パンでも焼く温度が違います。

家庭用オーブンだとオーブンの温度設定が1つしか無いものが多いです

ですが、業務用オーブンになると上火と下火が存在します。

蓋が有ると無いでは、話が全く違うのです。

蓋がある角食はこれ以上『釜伸び』(焼いているときに膨らむこと)出来ないラインが蓋のラインであり、そのライン以上に背が高くなることもありませんが

蓋のない山食は釜伸びしたい分だけ、型のトップラインよりも背が高くなります。

イメージですが、雷みたいなもので、オーブンの上火の熱(熱い)も背が高いところに早く到達します(吸収されます)。そのあとに背の低いところに到達します。

要しますと。。。。。

角食と山食では上火の温度を変えなければ上手に焼けない可能性があるということ。

山食の方が、山の釜伸びした出っ張った部分が焦げやすいということです。

課題1と2を乗り越えるためには。

角食と山食を同時に焼くことが出来ないということです。
山食の色付きも考慮した温度設定のオーブンの段が必要になるということです。

だけど。。。。。。。

ムラタパン。
この小さいオーブンを日中フル活用しております。
朝の3時40分からお昼の13時40分位まで、
ほぼほぼ隙間がないくらいびっしりと詰め詰め、キリキリで焼き続けております。

そうすると焼きあげれるのが14時半移行ということに。。。

実はこの卸先のレストラン、発送対応をしておりまして
焼き上げ、冷却、スライス、梱包、発送受け渡し
までが一通りの流れ。

これでは、佐川さんや、ヤマトさんの引き取り時間に間に合わないのです!!!

もーどうしたら良いんですかぁ。。。。

そんな時に少ない知識と経験で考え出した答えがこちら。

上火が届くのを邪魔する特注天板(自作)を作ってみました!!

これで、角食と山食を同時に同じ釜で焼く事ができます!

焼き色も焦げることなく

あとは、最適な生地の大きさを出して、焼き時間とクラムの厚みのバランスと
焼成時間の水抜けのバランスをどこまでのケービング(腰折れ)があっても妥協できるかのラインを考えるのみです。

妥協と聞くとあまり良い心地はしませんが、ムラタパンはショートニングも、マーガリンも使う気がしませんので、焼き上げ後時間が経っていくと、パンが小さくなっていきます。
ごくごく自然のことなのですが、
この『ごくごく自然な事』に対を成して
『不自然に当たりまえ』のパンというのも多々存在しております。

お米は炊きたてが美味しい。
おひつに長時間入れておくと固くなります。
ラップもせずに長い時間お椀においておくとカチカチになります。
それはデンプンの運命なんです。

食パンは焼きあがってあら熱が取れた時が一番美味しいと言われてます。
(パンにもよりますが)
冷めて袋に入れておくと焼きあげた時のクラムの硬い部分が少しずつ柔らかくなっていきます。
さらに時間が経つと固く収縮し始めます。
それはデンプン食品の運命なのです。

だからこれからも、ごくごく自然な事が当たり前に起きるパンを作っていこうと思います。

まとめ。

特注の型を作って角食と山食の焼き温度(上火)を一緒に出来るようになったので
効率よく同時に2種類の食パンを焼けそうです!

これが一般的に普及したら、日本中のパン屋さんが助かるのではないかと願っております!

余談。本当によだん。

特許取れるのではないかと思うレベルです!!
むしろ特許取りたいです!!
誰か、このパンの事しかわからないムラタに愛の手をです。
この過酷な労働環境にいるパン職人たちが
もっと楽をして
もっと効率的に
もっと多くのお客様の喜びのために働ける時間を作れるような
器具、機材を開発したいです!