最近寒くなってきました。
寒くなってくると、『寒さ』と『発酵』のパンの関係の知識が少しばかり必要になってきます。
『寒』がパン作りに及ぼす影響とは
寒いと基本的には発酵が遅くなります。
厨房の作りや場所(商業施設に入っているか、立地が山の中か、平地か、街の中か、海の側か、盆地か。。。。)によって日本の冬は湿度が大きく変わります。
水道水の質が夏に比べると別物になります。
色々と書き出せばきりが無いのですが。
とにかく、冬は冬のパン作りがあって、夏は夏のパン作りがあり
季節の変わり目は、その季節に対応するような変化に順応していく事が大事だと思っております。
それが、技術なのかなと、それが経験なのかなと、それが、添加物等に頼らなくても安定した品質のパンを作って、ご提供させていただける事につながっているのかなと思います。
それで今回は『寒』がどのように影響して、どんな障害があり、どの様に対処したらいいのかを、少しだけ書き出してみようと思います。
寒いと。
まずは、パン作りをしていく過程中の事。
- 捏ねる時に温度が低くなりがちです。
- 一次発酵をとるときの容器等が冷えている場合があるので一次発酵の時間が長くなります。
- 分割丸めの時に生地が接する台が冷えている場合があるので、その上で作業をすると一気に生地温が下がります。→ベンチタイムが長くなります。
- 成形する時に触れる台、手粉の温度、乗せる鉄板の温度、型の温度全てがパン生地を冷やす状況であれば、最終発酵が長くなります。
- 焼成する時に、窯の温度が下がりやすくなります。
工程全てに影響が出ます。
上記の事を意識せずにパン作りを『時間だけ』で作業した場合
捏ねる時、生地温が低くなります。→発酵が遅くなります→少ない発酵でパンチします。→パンが小さくなります。
ベンチタイムの際に発酵が足りてなかったりします。→窯伸びの少ない小さいパンになります。
最終発酵に時間がかかります。
発酵オーバーにボリュームが出ていないのになる場合があります。
最終発酵中の張りがなく、表面が妙にベタベタします。
焼き色が綺麗につきません。
等々。。。
具体例。
右のバゲットがベンチタイムの時に発酵が取れていない状況で無理矢理成形してしまった状況。
左が適切にベンチタイムの発酵が取れた状態で成形したもの。
左がベンチタイムが取れていないパンの焼き上がりで窯のびができていないです。右が適切なベンチタイムが取れていてしっかりと釜伸びしております。
パンと対話しながらパン作りをする事。
パンの発酵をコントロールする知識と技術を有する事。
今回は『寒』『温』に焦点を当てて書いてみましたが、『乾』『湿』『硬』『柔』『若』『古』『酸』『アルカリ』も重要です。
季節のある日本でその時その時の環境に合わせてパン作りが出来る様になるには
『出来る様になろうとする事』
これだけです。
関心を持つ事。
その先にパンを食べる人の笑顔が有るのかなと思っております。
一朝一夕では身につくことでは無いですが、目の前にやってくる四季を感じ続けながら、それが予測出来るようになって、コントロール出来るくらいになったら、やっとパン作りの面白さが分かってくるのだと思います。
自分が生命を宿したパン生地を最終的に焼き上げて、
人様の体の中に入ってお役に立つ事。
味的に、感覚的に、感情的に味わってもらう事。
『心を込める事』
母親が、子の健康を祈って食事を用意する事と似ているのかもしれません。
それは、機械的な事、事務的な事ではなくて、
願っている事、伝えたい事。
本日の総まとめ。
パン生地と対話しましょう。
以上