オーブンの設定温度と実際の温度、点火の有無の超重要な関係性

ムラタは厨房で毎日のように『なぜそうなったのですか』と
結構きつい口調で『詰め寄ります』

ムラタのイメージは『優しそう』『怒らなさそう』
実はそれの真逆です。パンを焼いている時だけは。。。。

それで、今回のムラタの『詰め寄った』問題とは。

クロワッサンの焼き方について

朝一の焼き上げられたクロワッサンを見て『これ焦げてますよね』

この一言から『考える1日』の始まりです。

 

 

 

 

 

 

 

 

焦げるといっても多種多様で。

ただ単に色がつき過ぎていて、苦味が生じるレベルだとか。
部分的には綺麗な色がついているけど、全体的にバランスを見てみると
食欲を削ぐような色付きになっているとか。

『焦げ』に関しても一概に『焼き過ぎました』ではすまない事が多くあるのです。

それで今回のクロワッサン。
上記の写真の右側のクロワッサンが『メゾンムラタでは焦げている』ものです。
食べれない事はないし、しっかりと火が入っていてサクサクしていて、これを良しとすれば、
十分お店に出しているようなパン屋さんは沢山あるのですが、メゾンムラタは出さない色付きです。

左側のクロワッサンの焼き方を良しとしております。

では、『焼き方を良し』にする為には色々と、オーブンの使用の仕方について考える必要があります。

オーブンに入れれば焼きあがると言うものでは無いです。

答えから始めに言ってしまいますと。

(今回はデッキオーブンを主として説明します)

 

 

 

 

 

オーブンには次の4点が有ります。
設定温度
実際の温度
パワー
タイマー仕掛けの点火の切り替え装置
基本的には、この4つがオーブン側の必要最低限の知識です
次に焼かれるパンには
鉄板の一度に入る枚数
一枚の鉄板の上に乗っているパンの個数
そのパンに適した焼く時間
そのパンの『釜伸び』(焼き始めて最初の数分で膨らむ加減)の期待値
基本的にはこの4つが定まっていないと『焼く』事はできないと考えております。
今回のこのクロワッサン
左側の方が色が薄くて右側の方が色が濃いです
左側の方がボリュームが大きくて、右側の方がボリュームが少ないです。
このクロワッサンを焼いた子に『なぜ焦げましたか』と聞いたら、
残り数秒で焼き上げで良かったところ、
長くタイマーをかけて色がつき過ぎました。
とのお返事が。
確かにそう言われてみれば、その通りなのですが、
もっと観察してみると。
焼き色全体でいうと、右はつき過ぎています。
だけど、焼き色の部分的にみると適正な焼き色です。
具体的に言うと、クロワッサンのトサカの一番トップの部分などです。
どこが焼き色がつき過ぎているのかと言うと
層(伸びている)の部分です。
だから設定温度と、焼き方を聞いてみると、
オーブンに入れて、初めの2、3分はパワーをしっかりと付けていて
そのあとは設定温度を下げて、焼きました
ここで原因がはっきりとしました。
なんで、釜伸びの部分と釜伸びしていない部分の白と黒の焼き色のコントラストが出来ずに
全体が焦げているように見えて、小さく焼きあがってしまったのかが。
ムラタが希望する焼き方ベースは
  1. 適正に発酵が取れた生地を
  2. 適正に乾かして
  3. 適正な卵の塗りをして
  4. 適正な設定温度で、パワーがついている状態で、初めの5〜7分を釜伸びをする為の時間と考えて
  5. 5〜7分を過ぎた頃、パワーを切って
  6. 適正な時間オーブンに入っていて水抜けがしている

    こんな感じです。

この希望する焼き方の4番が守られていませんでした。

適正な焼きとは、お肉をフライパンで焼く時を想像していただくと分かり易いのですが、
余熱だけで薄いフライパンで焼いた場合と、
強火で薄いフライパンで焼いた場合
弱火で薄いフライパンで焼いた場合

これらは全く違うものになってしまいますよね。

これらと同じことをデッキオーブンでも考えてあげなければいけないのです。

例えば、焼きたい温度が230度だったとしたら、設定温度は230度、実際の温度が235度であれば、
何も考えずにこの状態でオーブンにパンを入れれば、これは余熱で焼いてしまうことになります。

焼きたい温度が230度で設定温度が230度、実際の温度が225度であれば、これは実際温度が低くて
点火しながら焼いている状態になります。

この上記の2点の違いがお分かりになる職人さんならもう理由は分かりますよね。

設定温度を実際の温度が下回っている場合には点火して、
設定温度を実際の温度が上回っている場合には点火していないのです。
これを理解した状態で、クロワッサンを焼くと
釜伸びがしっかりとして、伸びたところは焼き色が白ぽく、伸びていない部分はしっかりとパリッとした焼き色がつく。こんなコントラストが綺麗な焼き色がつくのです。
他にも、パワーの使い方と焼き時間の関係性、フランス産のオーブン等の設定の上下温度のヒーターの点火がタイマー仕掛けであること、などなど、必要となる知識は焼くパンによっても焼くオーブンによっても変わってくるのですが、一つ一つの知識と思いやり思ってパンを焼いていきましょー。
っと言う今回はざっくばらんな締めくくりとさせていただきます。
それでは、コロナに気をつけまして、素敵なGWをお過ごしくださいませ。
追記 2020年5月13日
クロワッサンのデッキオーブンによるムラタパン的な焼き方について。
こんな感じで焼いております。
もし1鉄板にクロワッサンが8個乗っている場合で
鉄板4枚を同時に同じ段に入れる場合。
焼きたい温度は上火225度 下火190度 時間は12分からみて14分まで。
初めの7分間は点火している事。余熱では焼かない=もし設定温度より実温が高くなっている場合には、点火せず余熱で焼いてしまうことになるので、設定温度だけでも235度などにしておく。
オーブンに鉄板を入れる時の実際の温度が、上昇過程中か、停滞中か、を見分けた上で、初めの7
分間が点火し続ける事ができるようにパワーの調整をする。
パワーが強すぎると直ぐに温度が上がりすぎてしまい、設定温度より高くなり余熱焼になってしまいます。
パワーが弱すぎると、表面の色艶のない、のっぺりとした焼き上がりになります。
7分以降は余熱焼きになても大丈夫ですが、時間をしっかりと入れる事で水分が飛ばせるので、
12〜14分はオーブンにいれたいところです。
このような感じになってます。
もしこれが、1鉄板だけ入る時だと温度もパワーも落としますが、
基本の、初めの7分間は点火している状態で焼くと言う事と
12〜14分オーブンに入れ続けることが出来るように
設定を変えます。
なかなか一発で、決まりの良い設定を見つける事は出来ませんが、
毎回のデータの収集でそれを見つける事が大事なのだと思います。