とある営業日。
フォカッチャの生地が2回に分かれて仕込まれていて
同じように分割して同じように丸目をして
同じように発酵させてみると。
こんな状況になりました。
そして焼いてみると
このように差が出てしまいました。
どんな製法で作ったのか。
このパンを作る製法は『低温長時間発酵』
生地をこねて、
ガスの核を作って、
分裂させて、
生地中に酸化させるための二酸化炭素を適量含ませている状態で、
低温(0度〜12度)で長時間(15時間〜50時間)発酵、熟成、水和
させる事をメゾンムラタでは目的としております。
温度の幅と、時間の幅は、専門学校等でよく習うのは
『8度で15時間〜18時間』 『10度で12時間〜15時間』
色々と考え方にも違いがあり様々な表記があります。
どのやり方が良いと言うのではなく
その低温長時間発酵させた生地が
低温で長時間、発酵させるだけの価値ある工程を得ているかと言うのが
大事なポイントなのだと思います。
例えば
- 低温で早く冷やし過ぎてしまうと生地に力がつかなかったりとか。
- 低温でも冷やす生地総量が多過ぎて、生地温度が発酵が止まる(遅くなる)まで下がるのに時間がかかり過ぎて、二酸化炭素を多く含み過ぎている状況になってしまって、そのおかげで、生地が酸化し過ぎて、グルテンが溶けると言う状況になってしまい、焼きあがるパンが、ボリュームが出なくなったりとか。
- 低温で冷やそうとしているのに、使用する冷蔵器具の力が弱かったりで発酵し過ぎていたりとか
- 低温で冷やそうとしているのに、使用する生地を保管する容器が適切なものではなく(鉄バットは早く冷えます。プラスチックバックは少し時間がかかりますetc…..)
発酵し過ぎてしまったりとか - 生地給水量と水和させる時間(長時間発酵)のバランスが悪かったりとか
1.(給水量を多くして、低温長時間発酵の時間を短くすることもあります。)
これは、前日に冷蔵庫に入れる事の出来る最大量を入れても生産が追いつかない時などに、当日朝生地を仕込んで、冷蔵庫に入れて夕方(実質10時間ほどの低温長時間発酵)で焼く時などに必要な知識。2.(逆に給水量を少なくして、低温長時間発酵の時間を長くする事もあります。)
これは、定休日の前日に生地を仕込んで、定休日を跨いで(24時間プラス)休み明けに生地を焼き上げる時に必要となる知識。
製法に振り回されるのではなく
製法を理解して、
添加物等を使わずに、
焼きたい時にフレッシュなパンを焼けるようにする事ができて
冷蔵庫のキャパとミキサーのキャパが釣り合っていれば、2日に一回バゲット生地を仕込むだけでも回るような
パン屋経営ができる製法。
そんな素敵な製法だと、ムラタは思っております。
では本題にもどりまして
なぜ冒頭の写真のパンに大きな違いが出たのか。
大きく綺麗に発酵している生地は定休日前に仕込まれたもの。
一度に仕込む量も、ある程度の升があり、生地の冷えるスピード等色々な事が
考慮された低温長時間発酵。
小さく弱々しく発酵している生地は定休日に仕込まれたもの
追加で仕込んだ生地の量が少ないと言う事もあり、
捏ね加減、
生地の冷えるスピードの考慮(使用するバット、その時の冷蔵庫の状況)
が適切に判断されていなかった。
と言う事が原因に考えられます。
普通に考えれば、より新しい生地が膨らみも良いように思いますが、
低温長時間発酵の真髄を理解していると、そうとも限らないのです。
ナゼですか。
厨房で一番難しい質問です。
よくムラタが口にします。
ナゼですか。
結果だけではなく、過程をしっかりと見つめながらお仕事に取り組まないと
答えれない質問。
ナゼですか。
シンプルだけど、この『ナゼ』が理解できているとパン作りがより一層面白くなると思うのです。
本日のまとめ。
膨らむ生地と膨らまない生地
製法によってもポイントが違いますが、
低温長時間発酵の時の注意点でした。