カヌレのアパレイユは常温に戻してから焼いた方が良いと言う情報について。

カヌレ作りに没頭しております。

ムラタ的勉強の始まり方。

上記写真左が冷却からそのまま焼いたカヌレ。
上記写真右が常温に戻してから焼き上げたカヌレ。

今回は『アパレイユ(カヌレの液体)を焼く前に常温に戻してから焼く方が良い』
と言う情報について実際に自分でやってみました。

この方が良いと聞いてその通りにして上手く行くのは良いことだと思うのですが、なぜその方が良いのかと言うのがわかっていないと、スタッフにも教えることができないし、何より、
『偶然で』作っているような感じがお客様に面目無い。

だから勉強してみました。

まずは結論から。
冷えているアパレイユをそのまま焼きはじめても十分きれいに焼き上がる。
むしろ密度と食感のバランスで言うなればムラタ好みである。

ネットの中の情報はすごくすごく便利なもので、昔に比べると比較対照の幅が広がっているし、様々な情報が一瞬で手にはいると思うのです。

だけどムラタパンはこの一瞬で手にはいる情報より、失敗を繰り返して得た経験と反省した回数、反省の深さ、そこから立ち上がる考察力、データ取り、実際に自分の手で試してみる。

こんな時間の無駄と見えるようなことを大事にしております。

言ってしまえば

ただの『ドM』だと思います。

では本題。

なぜアパレイユを冷やした状態のまま焼く事が悪いと言われるのか。

カヌレのアパレイユをなぜ冷やした状態から焼き始めると良くないか。
これは焼いている最中に上に持ち上がりすぎて。
底がきれいに焼けなくなると言う現象を防ぐため。

確かに使っているオーブン、オーブンのパワー、オーブンの熱の伝える仕組み(コンベクションみたいな風の対流があるものや、平釜のように強制的な空気対流が無い物)の違いによって常温に戻してから使う方が上記の現象が起こりにくい。

ここではムラタパンの焼き方(こちらも常識から結構ずれてます)で言うとどちらでもちゃんと焼ける。
また焼き方は今度別で書きます🎵

じゃーどっちでもいいんんじゃね。

なんてスタッフにも突っ込まれそうなので、好みの話で、
常温のアパレイユと
冷蔵のアパレイユを焼いたときの比較をさせていただきます。

冷たいアパレイユの方が背が高く焼き上がると言うこと。

上記写真一番手前だけが冷えているアパレイユから焼き上げたカヌレ。

これは当然液体が冷えているので、表面が糊化するまでに時間がかかる分膨らむ時間が稼げると言うこと。

ここで固まるまでの時間と釜延びの割合が釣り合っていないと、カヌレ型から吹き出してしまったり、底から持ち上がった状態で焼き上がることになると思うのです。

この固まるまでの時間と釜延びに影響を与えるものは、

レシピの卵の量(卵黄と卵白の割合)

小麦粉もしくはそれに変わるでんぷん質の性質
またそれを混ぜ合わせるときに作ってしまうグルテン質等の粘性。

この粘性を落ち着かせるための(寝かす時間)

牛乳と油脂分の乳化の進行度合い。

温度上昇と密接な関係にある天板に並べている個数(熱を吸い取るもの)と
焼いている機械(熱を出すもの)のバランス

これらの諸条件でも大きく変わるので、レシピによっては作り方によっては、常温に戻さないと出来ないケースも存在します。

では背が高く焼き上がると良いのか悪いのか。

 

ムラタ的には背が高い方が素敵だと思ってます。

大きく見えるしー。
カヌレってチビなわりには高いじゃないですかぁー🎵って言われた経験もありまして

大きな方が見映え的にも良いかなと。

それと一番大事なのは食感。

今回の比較したのは
常温、冷蔵共に93gのアパレイユを入れて焼き上げました。

冷蔵の方が大きく
常温の方が小さい。

同じ質量で体積が違うと言うことは、密度が違うと言うことです。

同じペットボトルの水をトイレ位の小部屋で蒸発させきるのと
20畳の部屋で蒸発させきるのとでは湿度の感じ方が違いますよね。

同じ質量のものが体積が大きくなるとよりサックリする部分が増えると言うことです

逆に同じ質量のものが体積が小さくなるとよりネットリとする部分が増えると言うことです。

この比較からムラタ的な好みで言いますと、体積が大きな方が好みかなと。

これも人それぞれ好みがありますので選ぶ権利がございます。

そして、冷えてる物は蒸発にかかるまでの時間が長くなるせいか、実際に焼き上がりの重さを量ってみると、

常温62g
冷蔵69g
共に同じオーブンで同じ温度で同じ焼き時間、同じ焼き色。

これらを全部ふまえてまとめるとこんな食感に成りました。

回りのカリカリな部分の軽い歯の入り方、中のネットリとした部分とカリカリ部分のバランスが好みであると言うこと、大きさが大きくて見映えが良いと言うこと。
重量が維持できていて、ただのパサパサカヌレではないと言うこと。

こんな結論から

完全に好みの塊みたいなカヌレですが冷却しているアパレイユの方が良いと言う結論に至りました。只今ムラタの頭のなかはカヌレでいっぱいでございます。

上記の内容は、厳密に言いますと、何百回と試作をしてえた結論、経験では無いのですが、数回の検証で得た、実体験的な感覚でございます。

今後、毎日、毎日焼き続ける事によって、まるで子供の成長を見るように、小さな変化に気付き、その変化に対応して、また意見が変わる恐れがございます。
その際にはこちらのブログにまた改めて書かせていただきたく存じ申し上げます。

暫くカヌレ雑談が続きそうですが、おつきあいくださいませ。

最後まで読んでいただきありがとうございました。