カヌレを焼き始めた時に、持ち上がってしまい
そのまま型の底につかず、焼き色がつかないと言う現象が起こります。
この原因について本日、ムラタ的に実験してみました。
そもそも『持ち上がる』とはどう言うことかと言いますと。
カヌレを焼き始めると、
第一段階に全体の沸騰が起こります。
この全体の沸騰までに至る温度の上昇中にデンプン質が固化する温度を通り
卵黄が焼き固まる温度を通り卵白が焼き固まる温度を通ります。
第二段階に膨張します。
一旦、デンプンの固化やタンパク質が焼き固まると、『トロリ』とした半液体、半固体
みたいなトロトロな状態になっていきます。
この時にアパレイユの内側に発生する水蒸気を、このトロリとしたアパレイユが包み込み
膨らみます。
パンで言うところのグルテンがガスを包み込んで膨らむと言う現象に似ている気がします。
第三段階に収縮します。
型の上から少し飛び出すくらいを目処に膨張した後に
収縮し始めます。
これは、タンパク質に火を入れ続けると縮む現象だと思われます。
お肉を焼き続けると小さく硬くなっていくのに似ているように思います。
第四段階に収縮した状態で色付き、焼き固まります。
この時に膨張したカヌレが、収縮して、型の底にしっかりとついた状態で色が付くと
全体がカリッとしている、黒とも言えない、茶色とも言えない、焦げてるとも言えない
なんともカヌレな色と味と食感になるのです。
こんな一連の焼き始めから焼き終わりまでの過程を見ると、
沸騰、膨張、収縮、固化、タンパク質変性の順序だったバランスと
内側に存在する気泡、発生する水蒸気の量
これらがバランスが取れていないとできないと言う事になります。
デンプン質が少なくて焼き固まるのが遅いアパレイユであれば、タンパク質を増やしたり、
気泡を抱え込む力が少ないのであれば、わざと最初から気泡を多く入れるように混ぜておくとか
柔軟に、レシピ、焼き方、を操って理想の食感、質感を作っていくことができます。
レシピと焼き方、作り方がマッチしていなければ、どれだけやっても、無理なのです。
その無理な状況の中、独自に変な焼き方をして、『出来たー』なんてことをすると、
こんな事になります。
普通にも見えなくはないのですが、
これは、型から飛び出し過ぎて、もう型の中には戻れないレベルで膨らんでしまい
無理やり、ショックを与えて型に戻して焼いたカヌレです。
食感で言えば、表面はカヌレっぽいですが、中身がゴムです。
ムチムチしたゴムです。
歯切れが悪すぎるゴムです。
これをカヌレと言って良いのかどうかわ、個々それぞれだと思うのですが、
せめて、カヌレを買う購入者には選ぶ権利があり、想像するワクワク感があったほうが良いのではないかと思います。
だから並んでいるカヌレの裏を見ることが出来れば見てください。
ショックで型に戻し込んだカヌレの裏はこうなっています。
平べったい焼き色ではなくて、縞々に色がついていることがございます。
今回ムラタのカヌレ実験で、作ってしまった、型から飛び出しカヌレで、もうどうしようもなくなって、焼いている途中でショックを与えて型に無理くり押し込んで、強引にお前はカヌレだぞといい名付けた、カヌレの形をして、カヌレではないもの(っとムラタが勝手に思っているもの)
反抗することなく自然に持ち上がって沈んだカヌレの裏面はフラットになっています。
っと言うのがカヌレが焼き上がるまでの一連の流れ(っとムラタが勝手に解釈しているもの)でして。
ではカヌレの型に流し込む前に混ぜるのは、 ホイッパーが良いのか、 ゴムベラが良いのかと言う話の結論
レシピによっては気泡を入れた状態で焼き始める方がいいと思います。
ホイッパーでガシャガシャと気泡を入れた状態で焼いても綺麗に焼きあがります。
レシピによっては気泡を入れることなくそっと混ぜた状態で焼き始める方が良いと思います。
大概のレシピは後者よりに作られていると思います。
メゾンムラタのレシピも後者よりです。
実際にホイッパーで混ぜたもの(左と中央の列)とゴムベラでそっと混ぜたもの(右列)がこんな感じです。
もしこうなった場合は、諦めず『型に戻して焼き続けてください』っとネット等では書いておりますが、ムラタの使っているパン屋用の平釜では、型から出して、上火でがっつり色をつけます。
だけどやはり、型の中で成熟したカヌレと、型から未成熟で出して色だけつけたカヌレは違うのです。
歯が入るときの食感が全く違うのです。
最近カヌレばかり食べているからでしょうか。
昨日、ムラタがどう頑張っても普通なら参加できないような大先輩方が集う
関西のクラブ ドゥ ラ ガレット・デ・ロワの会に連れて行っていただきまして
インスタ等を見てくれている先輩方からお褒めの言葉をいただきました。
『お前はカヌレ馬鹿か』と。
最高の褒め言葉でした。普通なら目にもとめてもらえないようなムラタが。
こうやって先輩に大きなステージに連れて行っていただき、普段接することのない瞬間に
あいつ『また馬鹿やってると』思い出してもらえることがありがたいのです
カヌレをそっと混ぜた方がいいと言う情報は、レシピによりけりと言う事です。
どっちかわからないという方は、そっと混ぜてください。そして、もう少し背が高い方が良いなという好みのような物が出てきたときに、背を高くする方法の一つとして、気泡を含ませた状態で焼き始めるために混ぜ方を工夫すると言う事を出来るように、頭の片隅にでも置いておくと良いと思うのです。
カヌレの説明動画作ってみました。
youtube始めたばかりでクオリティ低いですが、参考までにみていただけますと幸いです。
『カヌレ作り 実際どんなところなのかポイントまとめてみた。』
コメント
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