結論から言うと、手動分割機をつくってもらいました。ちょっと営業入ってます。

分割と言う作業について考える。

機械を使う事は悪なのか。
手作業のみが善なのか。

 

パン作りの行程のなかに『分割』と言うのがあります。

まとまった生地の量を捏ね上げて、
作りたいパンの大きさに小分けにする事。

この分割という作業。

日本はまだまだ手分割が多いのですが、フランスでは基本、機械で分割

機械の分割機を何故か毛嫌いする日本の職人気質。
ムラタもこの職人気質が好きと言えば好きなのですが
1日1000個のパンがあるとすると、やはり機械で分割をする方が
時間的に見ても、体力的に見ても、スタッフの労働時間的に見ても
機械の方がある一定の条件さえ揃えばいいと思うのです。

そこでまず考えたいことは日本のパンに対する独特な物の見方。

ムラタはフランスをメインでしか比較できないので、ここでは
日本とフランスを勝手に比較したいと思います。

日本でのパン職人の仕事【分割】はと言えば

菓子パン生地から
あんぱんが50gが30個
クリームパンが60gが40個
カレーパンは50gが40個

バゲット生地から
プチバゲットが90g100個
ベーコンエピが100gが60本
チーズクッペが150gが50個
バゲットが350gが80本
パリジャンが550gが9本

ブリオッシュ生地から
ブリオッシュシュクレ50gが20個
ブリオッシュショコラが70gが30個
クランベリーのブリオッシュが90gが10個

食パン生地から
190gの玉を角食パン用に120個
260gの生地を山食パン用に36個

…………っと途方も無い位の種類と重さがバラバラな分割という手作業があるのです。

フランスでのブーランジェの仕事【分割】はといえば
80%近くがバゲット生地からバゲット350gをとる仕事
だから分割機で7000gの生地を50玉とって20個に機械を使ってする=1000本のバゲット。

ムラタが日本で修行していた時には疑問に思ったことは全く無かったのですが。
フランスで修行を始めて直ぐに感じたことは。

1グラム単位の分割秤が無い事。
小さいパンを作る場合には、
20分割した生地を目分量で4分割や2分割にするということ。
(決して全てのパン屋がこうと言うことではございません)

ここにフランスと日本のパン作りに大きな違いが垣間見えます。

種類が沢山ある日本と種類が少ないフランス
小さくて大きさが均等に揃っている事が求められる日本と、
多少の大きさの違いはさほど気にしないフランス

日本のパン屋さんにとって
手分割、手丸めが必要とされている事は
上記のように、きっちりとしたパンを作る几帳面なパン作りによるものだと気付いたのです。

だから長時間労働にも結びつくくらいの問題になっているという事。

そこで考えたのです。

分割をどうやったら
もっと〔楽に〕
日本のお客様に〔満足〕のいくものにしつつ
作業を簡素化出来るのか。

一つ目の案として、全てのパンの重さを一緒にしてしまう。

あんパンも、ソーセージパンも、クリームパンもバゲットもメロンパンも食パンも、全てのパンを基本同じグラム数で分割すればややこしい事は無くなるのです。
そして、分割丸め機と呼ばれる物を使って、1800gの生地を30分割にして、一個が60gになるようにするみたいな、機械に頼る部分を増やす。

分割丸め機とはこちら。

こうすれば、生地の種類は違っても全て同じグラム数ならややこしいこともなく、分割は圧倒的に簡単になります。
だけど、、、、、、、この分割丸め機、使う事に少しだけ技術が入ります。
均一に伸ばして適度な厚み調整と、適度な丸めの時間設定をしなければなりません。
簡単に言ってしまえば、分割機や分割丸め機を使っても、均一なグラム数で自動で分割されたり、丸められたりする訳ではないという事。ある程度の技術と経験が必要なのです。

アバウトさがあまり好まれない日本のパン屋さんでは、機械を通した後もグラムを量り直したりと言った2度手間が必要なのです。


二つ目の案として、量り売りのパン屋さん形態にかえるという手段

パン自体の金額は1グラムいくらという単位で表されて、購入する際に量って精算するやり方。

これは導入しようと思えば結構簡単に導入出来ます。

ですが。
量り売りのパンは結構敬遠されます。

何グラムかも分からないし、買い方も分からない、だからちゃんとした説明がないとお客様は買おうと思わなくなるのです。
これも慣れの部分が多く出来ないことは無いです。対面のお肉屋さんのようなものです。


3つ目の案として、
日本的な小さなパン用の分割丸め機と
バゲットや食パンのような大きな玉用の、分割機の2台持ちをする事。

分割機とはこちら。

中に生地を入れてスイッチを押すと20分割にしてくれたり、物によっては10分割にしてくれたり、カードルを付け替えれば細長い分割もできたりします。

2台の分割機を使い分けるというやり方。
これは、資金力と、厨房の広さがモノを言うのですが、これは一番日本の『パン屋さん』に合っていると思うのです。

細かな日本っぽいパンは分割丸め機で60g玉や40g玉などを取り
大きなパンは分割機で260g玉や350g玉などを取る。

これを導入するにはざっと新品で2台購入すると500万円

なかなか現実味がないし、相当な量を作るパン屋さんでないと導入するメリットがないです。

1日あんパンを8個とか言うレベルだと手分割の方が圧倒的に現実的です。

でもメゾンムラタが直面している事はと言えば。
分割丸め機は既に導入済みです。
1日に大体90分は機械のお陰で早くなっております。

だけど、食パンやバゲット等の大きな生地の話になると、この同じ分割丸め機が使えないのです。
『厳密に言うと使えます。分割版を30分割とか14分割とか変えることが出来るので。』

だからもう一台買うことが分割における時短に繋がるのですが、数百万のお金をポンっと出せるわけもなく。今までは手分割でなんとか早くしようとしたり、同じ30分割の機械でなんとかグラムあわせをして使ったりとしておりました。

ですが、機械は今の所、同じ単純作業を繰り返す事にのみ長けているので、違う仕様用途で使うと生地を痛めることが多くなってしまったり、やはり手作業は時間がかかりすぎて生地をもっとも分割したいタイミングを逃してしまったり。

そこでムラタは考えた。
リテールベーカリークラス(個人のパン屋さんクラス)でも導入できる
分割機が欲しいと。

世の中に無いものなら作ってしまえば良い。

だからこんなものを作っていただきました。

手動分割機

お値段なんと12万円。

小さなパン生地玉は殆どを分割丸め機で分割して、
大きな生地玉はこちらの手動分割機で分割します。

12万円を高いと思うか、安いと思うかは人それぞれなのですが、
ムラタは、これを入れる事によって

毎朝の食パン分割にかかる時間が250玉近くの手分割25分が半分くらいの時間で終えれるようになりました。

多少のグラム数の誤差は出ますが、上手に使えば許容範囲内です。

今度はこの手動分割機を20分割出来る刃を作ってもらうつもりです。

日本のパン屋さんでは食パンの分割が毎日の単純作業。
出来るだけこの単純作業を早く終わらせて、生地全体が、同じ発酵度合いで作業を進める方が
良いと思っております。

手分割で一つ一つを大事に分割丸めをする事も勿論良いのですが。
ムラタがした判断としまして、半機械化。今だと思う発酵度合いの時に分割を終えて、
内層、スダチが良いパンを作る事も大事だと思っております。

この分割機がもし他のパン屋さんも使いたいと言うのであれば、ぜひご協力したいと思い。

勝手にこの手動分割機の販売代理店になる事を決めました!
それはこれからのパン屋さんの働き方の為。
続けていきやすい作業を普及する為。

もしこの分割機を見たいと言う職人様がいらっしゃいましたら、ムラタまで直接メッセージを頂けますと幸いです。厨房で実際に使っていただけます。作ってくれる高室鉄工所様をご紹介させて頂きます。

パン職人。働き方改革。少しずつ前進中です。

maison.murata@gmail.com

 

結論まとめ。

日本の個人事業クラスのパン屋さんは、
分割機をある一定の生産量があるのであれば、
導入するべきだと思うのです。
手作業で感覚を身に着ける事は本当に大事な事。
そして、その感覚を機械を使って行う事ができる技術を持ち合わせる事。
これが今からのパン屋さんに必要なスキルなのかもしれません。