バターについて考える

パン屋でよく使う材料の一つとして
『バター』があります。

一昔前は、今のように値段もこんなに高くなく、
当たり前にバターを仕入れて、当たり前にバターを使っていた時代がありました。

それが今では、原材料の高騰がメインだとは思うのですが、代替品に頼る部分も多く出てきているように思います。

例えばマーガリン、大豆を原料にした加工油脂。

これらを使う事も勿論良いと思うのですが、
昔から食べ慣れたバターについて今回はお話しさせていただければと思います。

パン屋での仕様用途

  1. ムラタパンの中だけで限って言いますと。
    バターはこんな仕様用途で使われております。

    1 サンドイッチ等を作る時に直接塗る
    2 焼き菓子、クリーム等を仕込む時に溶かして使う事や、混ぜ込んで使う。
    3 パイやバターの折り込みに使う。
    4 生地の仕込みに使う

    これらがメインの仕様用途です。

    ざっくりと書いた1、2、3、4番ですが

味を求めるもの

形状を求めるもの

価格を求めるもの

保存性を求めるもの
これらで使い分けをしております。

他にも栄養価的な観点でも見る事もありますが、今日は割愛させていただきます。
バターの使い分け。
あまり聞き慣れない言葉ですが、
サンドイッチ、お菓子作り、生地の仕込みには牧草牛のバター。
折り込みには穀物飼料牛のバター。

こんな感じです。

なぜこのような使い分けに落ち着いたのか。

価格

まず一番簡単な理由として、ムラタパンの仕入れの価格では、
海外産の牧草牛のバターの方が安く仕入れる事ができて、
国産の穀物飼料牛のバターの方が高く仕入れるからです。

仕入金額を直接ここに書く事ができませんので、どの位差があるかだけ書きますと

ニュージーランド産5kgブロックバター450g
ドイツ産ポンドバター450g
明治ポンドバター450g

これらを明治バターを100として考えると
ニュージーランド産 91.1%
ドイツ産 95.9%
明治バター 100%
になります。

1ヶ月で明治バターだけを使った場合と使い分けた場合だと
月、数万円の仕入金額の差が出てきます。
これは、下町パン屋としては見過ごせないところです。

年間で数十万の差が出るのであれば、その分をもっと違う用途でお客様やスタッフを喜ばせるために使いたいです。

味で言えば、穀物飼料バターと牧草牛バターはやっぱり違うように思います。
細かい成分分析等は個人のパン屋では難しいので、味覚、臭覚テスト位しか出来ませんが、牧草牛の方が気持ち濃く感じられるような気がします。
色目で見ても
牧草牛の方は黄色いです。
緑色の葉を食べていれば勿論、色的にも差が出てくるのであまり驚きはしないのですが、バターを使いながら、牛さんのお乳を頂いている事を考えれば、自ずと食べ物のありがたみが感じられます。

あと、この味という観点で注意したい事が、
5kgブロックバターと450gポンドバターの保存方法。

どちらも冷凍でムラタパンには届くのですが、
これらを保存する場合、冷蔵にする必要性が出てきます。
この時に、テトリスみたいに細かく詰めるのがポンドバター
思いっきりスペースを取るのが5kgバター。

だから、ブロックバターは場合によっては解体する必要も出てきます。
この時にバターあるあるです。

臭いの吸着。
ポンドバターはしっかりと包まれていて、空気に触れないように保存がしやすいのですが、ブロックはどうしても冷蔵庫内で、空気に触れ易くなってしまいます。小分けにしてラップに包む等の対処が必要になります。

気にしない人は気にしないと思うのですが、サンドイッチ等に使う場合にはムラタは気になります。
生地の仕込み等に使う場合にはあまり気にならないです。

性質

これが大きく関わってくるのは、融点の違いです。

バターの折り込みや生地の仕込みにバターを使う場合、

バターが最も延びやすい温度と生地が最も延びやすい温度や、菓子パン生地等に練り込む場合、希望捏ねあげ温度にたいしてより近い温度で柔らかい(溶けない)バターが望まれます。

使っているニュージーランド産のバターと明治を比べると、同じ18℃でもニュージーランドの方が圧倒的に柔らかいです。

もし折り込みの際に明治がなくてニュージーランドを使う場合には16℃位にする必要が出てきます。(感覚的に見極める部分が大きいですが、ニュージーランドの方が柔らかくなりやすいと注意する位の気持ちです)

そしてクロワッサン等の発酵の過程中の話をすると、やはりニュージーランドの方がバターが溶け出しやすいです。

29℃とかのデニッシュ、クロワッサン専用のホイロが有る場合には問題ないのですが、他の食パン等と一緒に発酵をとる場合はこのバターが溶け出してしまう温度に優位性を持たせた温度管理が必要になってきます。

では実際にどうやってバターの温度と柔らかさ、融点の違い等を見分けるかと言いますと。

こんな原始的な方法でムラタはバターが変わったり、試供品が届いたりすると試します。

『ムラタくんは自分で使っている材料の事も知らんのか。』

このお言葉を頂いた時、地の底に落とされた感じでした。
でも、この言葉を頂けたから、学ぶ基本姿勢が出来上がり、
知っている事が1%で
知らない事が99%位の気持ちで材料と向き合う事が出来るようになりました。

まだまだ、職人見習い。まだまだ勉強不足。
これからも少しずつ勉強継続です。

以上本日のお題『バター』についてでした!

 

今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。