仕込みを間違うと大変なことになる。

先週のこと。
仕込みをやっているスタッフが、顔面蒼白で
『もしかしてイースト入れていないかもしれません』
っと報告してきた。

スタッフが失敗をして、
ムラタがとる反応というのは、
怒る
叫ぶ
ど突く
冷静に判断する。

このどれかに当てはまる。

っで今回とった反応は
冷静に判断するだ。

時刻はいつもの作業終了の1時間前、
気づくのが遅すぎだ。

バゲット生地を天然酵母の種継から冷蔵庫に入れるまでにかかる時間は6時間位はかかってしまう。

もう怒っている暇なんてないのだ。
とりあえず翌日用の生地を準備しなければいけないのだ。

っと言うことで、
怒るも、叫ぶも、ど突くもなしで、
冷静に判断して、作業開始である。

イーストの入っていない生地を小分けにして全て冷凍をかけて、
今後の仕込みの時に、このイーストの入っていない生地を混ぜ込んでいくことになる。
ムラタパンで許されない行為、それはパン生地を捨てる行為だ。
それは、我が息子を捨てる事と同じようなことであり、
絶対に許されない。

間違いを取り返す時間と、
再度、ちゃんとした生地を用意し直す時間。

ダブルパンチである。
いや。
トリプルパンチである。

仕込みを間違うと言うことは、二倍も、三倍も労力がかかると言うことだ。

だから、間違えないようにするための伏線が二重、三重、四重と用意されている。

この伏線をすり抜けて、間違いというのは突然として現れる。

慎重に、だけど最速で、パン作りを行う。
それが職人なんだ。

こんな事を言うシェフというのは、
今の時代、
絶滅危惧種だということも十分承知している。

でも、独り立ちして、独立をした時に初めのうちは
頼れるものは、己の技術しかないのだ。

資金も、時間も、初めはないけど、
身についた技術というのは、
絶対に君を守ってくれるし、
安定期に入るまでの手助けになってくれる。

『だから、技術をしっかりと身につけろ』
っだ

こんなブログを書いて、
つくづく絶滅危惧種のシェフだと実感するのである。